久しぶりに面白い本を見つけた。
広辞苑より厚いこの本には、明治期から2002年までに起きた犯罪や騒動がまとめられている。
「そんな事件もあったなぁ」と懐かしいものから、「そんなことあったのかよ!」という驚きの事件まで網羅。

猟奇殺人や快楽殺人は最近の社会現象のようにマスコミで取り上げられるが、実は明治期や大正期もかなり猟奇事件が多い。
例えば、水車小屋で心中しようと女を先に殺したものの、死にきれなかった男が女の死体とともに一ヶ月間水車小屋で暮らした事件では、発見されるまで男は女の死体に湧いたウジを食べて空腹を満たしていたという。
また、土葬だった時代には死体を掘り起こしては死姦を繰り返す男などもけっこういたそうだ。
こんな事件が現代に起こったならワイドショーやニュースは世も末的な論調で報じることだろう。
さて上記の事件は別の書籍で読んだものだけど、今回のこの本には更に驚くべき事件もあった。

某地方で。
28歳の母親と、6歳男児の死体が発見された。
二人の遺体はともに腹を裂かれ肝臓が抜き取られていた。
しばらくして犯人が捕まり、犯行の動機が明らかになる。
この当時、人間の肝臓は万病に効くとされ売買目的でしばしば殺人がおきていたという。そしてこの犯人もまた売買目的で殺人を犯したと供述した。
ただこの犯人は、大阪の業者に犯行を勧められ、その業者と一緒に事件を起こしたと当初供述したが、結局大阪の業者は発見されず単独犯行として死刑になった。
また、子供の首を切断して母親の腹に詰めるという異常な行動もしており、本当に臓器売買が目的だったのか謎である。というか殺人目的だろこれ。

病気がらみでいうと、これはうっすら記憶にあるけれど、エイズノイローゼで子供を殺した母親の事件。
昭和60年前後のエイズが最初に話題になった頃は、今じゃ考えられないけどある種のパニック状態で、歯医者で感染するんじゃないか、床屋でも感染するんじゃないか、他人と同じコップの水を飲んだら感染するんじゃないかという不安が蔓延していた。
で、こんな状態だからノイローゼになる人も多数いたようで、そんな中起きたのがこの悲惨な事件である。

母親の体調不良がしばらく続いたある日、自分がエイズに感染したのではないかと疑いはじめる。
疑いは日に日に大きくなり、世の中のパニックとともにノイローゼ状態となった。
「自分はエイズに感染した。自分は死んでしまう。」
疑いが確信へと変わっていったとき、子供が風邪をひいた。
もちろんただの風邪である。
しかし母親は、
「子供に私のエイズが感染してしまった。私も子供も死んでしまう。」
そして、
「子供と私が死んだら、旦那はひとりぼっちになってしまう。それなら子供も旦那も殺して私も死のう。」
という結論に至り、子供は殺され旦那も殺されかけた。

アクト アゲインスト エイズというイベントが毎年開かれている。
歌手やタレントが集まってコンサートをするこのイベントに「歌い踊っているだけではエイズの感染は防げない」などと批判的な物言いをするコラムニストもいる。しかし上記の事件を考えれば桑田圭介がコンドームをばら撒きながら歌うことは有益なことじゃなかろうか。彼らが歌い踊れば感染してもいないのにノイローゼになる母親もいないだろう。

ちなみこの本は値段高すぎ。
日曜日に図書館で見つけたんだけど、辞書辞典の部類だから持ち出し禁止になっていた。

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