シートベルト（サーバーダウンのときに書いた日記）

明け方のこと。

仔猫のような寝顔で眠っていると、
ザァァー！ッシュバァー！ガリガリガリ！
という激しい音がした。

起きて外を見ると、今まさに高速道路で乗用車がスピンしている最中だった。滑りに滑ったあげく、ようやく進行方向とは逆向きに止まる。しかも横倒し状態。

暗いので乗客がどうなっているかわからない。
事故車の横を、散乱した車の破片を踏みながら後続車が通り抜けていく。5分たち10分たつが道路公団の車もパトカーも来ないので110番通報する。
110番するのは時報を聞こうとしたのに間違えて110番したとき以来だ。
あのときゃあせった。ビックリして電話切ると、数秒後に警察から折り返し電話がかかってきた。

電話から五分後にパトカーが来る。さらに5分して救急車。
夜明けの光で事故現場がはっきり見えてきた。
道路わきに足が見える。足フェチの直感で（尻フェチでもあり、貧乳フェチでもあり、しゃがんだローライズから見える尻フェチでもある）、20代前半の女の足であることは間違いない。
最初、足しか見えなかったので、運転手が車外に投げ出された衝撃で、足が取れちゃったのかとドキッとしたが、よく見ると黒いホットパンツの女が座り込んでいる足だった。傍にもう1人若い女が立っている。

ところで、事故のニュースで「即死」という表現がある。
基本的に事故で死んでも「即死」とはいわない。脈もなく瞳孔も開き、明らかな死のサインがでていても救急隊員は病院まで遺体を運び、医師が死を宣告して初めて「死亡」となる。
報道では「病院へ運ばれましたが、死亡が確認されました」という。

じゃあ「即死」ってなにさ？

知り合いに小さな地方新聞社の記者がいて、その人から聞いた話し。
資料を整理しているとき高速道路での事故写真を見つけた。
グチャグチャに壊れた車の写真で、なぜか車の脇にサッカーボールが転がっている。
「このボールなに？」
「・・・・」
「ボールだよね？・・・・」
「・・・あたま、・・・」
こういうときに「即死」というのである。

さて家の前の事故現場。
座っているほうは足を怪我しているようだ。
ただ、横倒しになった車から出られたから重傷ではないだろう。
きっと二人ともシートベルトをしていたと思う。
してなかったら車がスピンして横倒しになったとき、車外に放り出されるか、車の中でシェイク、シェイク、ブギーな胸騒ぎ状態になって、サイドガラスや天井に頭をしたたか打ちつけていただろう。シートベルトって大切ね。

夏休みに車で出かける方はシートベルトを忘れずに。