葬式とおかず

先週末母方の祖父が亡くなりまして本日葬式。
いろいろと思い出がありますが、祖父からは人生において重要な意見を頂戴した。

私たちの生活において食事は生命維持に重要であり、うまいものを食って精神的な安定を図るためにもまた重要である。
しかし、食事には解決しなければいけない悩ましい問題が常に横たわっている。

［好きなおかずを先に食べるか、最後に食べるか］

これは飽食の日本社会に生きる我々に課された悩ましい問題だ。
幼稚園から小学生2年くらいまでのあいだ、一緒に食事をする大人に片っ端から質問した。
「好きなおかずは最初に食べた方がいい？最後に食べた方がいい？」
しかし誰一人納得できる答えを持っている人はいなかった。

あれはたぶん夏休みだったか、祖父の家で食事の折この質問をしてみた。
祖父はいつもマイペースな話し方をする人で、そのときも淡々と話していた。

友達の家ですき焼きを食べたのよ

その家のお母さんが、肉や野菜を取ってくれてな

おじいちゃんはネギが嫌いだったもんで、肉を食べる前にネギを食べたのよ

ほいたら、その家のお父さんが「キミはネギが好きなのか、じゃあどんどん食べなさい」
つってネギばっか取ってくれたのよ

それでずっとネギだけ食べて帰ってきた

だからおじいちゃんはな、好きなものを先に食べる

祖父が子供の頃はもちろん戦前で、すき焼きなんて珍しいものだったと思う。
たまごだって1パック140円で買える今とは違ってもっと高価なものだった。
そんなときのすき焼きで肉が食えなかったのは悔しかっただろう。

その話を聞いて以来、好きなおかずを最初に食べるようになった。
人の家でご馳走になるときは尚更だ。

へビースモーカーだった祖父の急逝で、祖父の部屋にはタバコの箱が残されていた。
そこから一本拝借して何年ぶりかでタバコを吸った。
うまくもなくまずくもなく。